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多様性と類似性

アメリカ人は「AとBは違うのか?」というような話題で議論するのが好きです。感謝祭のとき、お決まりのように話題になるのが、スウィートポテトとヤムは違うのか?ということです。オレンジ色をしたアメリカのスィートポテトは、感謝祭では必ずと言ってよいほど出されるメニューなのですが、このスウィートポテトのことをヤムとも言います。そして、どっからどう見ても私の目には同じものとしか見えない芋の種類について、延々と論じ続ける人が少なくありません。芋の種類だけではなく、ケージャン料理とクレオール料理は違うのか、アメリカ南部料理とソウルフードは違うのか、というように、似て異なるもの、もしくは同じものに異なる名称があるものを見つけると、それはもう大変です。そもそも、食事をするときや家庭で料理を作るときに、これはソウルフードである、これはケージャン料理である、と意識している人は稀です。そもそも何をもってケージャン料理というのかはっきりとしていないのに、さらにはっきりとしていない別のもの比べるのですから、答えが出ないのは当たり前です。

しかしながら、実質的に違いははっきりしないものに対して、異なった呼び名が与えられているのは、大きな理由があります。アメリカ南部では、アメリカ南部料理をソウルフードという人は、ほとんどアフリカ系アメリカ人です。彼らには、ソウルフードという名称には大きな意味があるからです。それは、実際に調理法や使われる食材において、ソウルフードとアメリカ南部料理が異なっているからではなく、なぜ自分たちにとって馴染み深い料理をソウルフードと呼ぶのか、その理由が重要であるからです。料理を理解するには、その背景に文化的、歴史的なルーツを理解しなければなりません。そして、調理法や食材の使い方について、内容的にははっきりと区別できないものであっても、ルーツが違いものであれば、それぞれの名称が与えられていると考える必要があります。