81 Cooking Tips

ローストとグリル、アメリカ式のバーベキュー

一般的に日本でもアメリカでも、バーベキュー (barbecue/ BBQ) というのは、直火で焼きながら食べる料理全般のことを言い、煙が出るので、普通は屋外で行う調理のことをいいます。日本では、屋外で調理する機会それほど多くないので、バーベキューといっても、シンプルな調理方法が多いですが、アメリカの屋外調理の方法には、様々な種類と加熱技法があります。今回は、アメリカの屋外料理の手法について、まとめてみたいと思います。

ロースト (roast) と グリル (grill)

ロースト(roast)とグリル(grill)という調理方法は、似通っているので混合されることが多いですが、この二つの調理技法は、厳密に言うと異なったものです。一般的なオーブンで、肉や魚を焼くことは、ローストですが。屋外調理で、肉や魚を焼くときに、もっともよく行われる調理方法は、グリルです。ローストとグリルは、調理技法としては、明確に区別されています。

ロースト(roast)は、高温に熱した空間に、調理したい食材を入れて焼きますが、食材を焼いている空間全体が、出来るだけ均一に温まるようにして、食材に火を通していきます。オーブンを使うときは、鉄板やベーキングディッシュなどの器に食材を入れて、器を直火に当てないで焼きます。どちらかというと、ゆっくりと時間をかけて火を通す調理に向きます。

一方グリル (grill) というのは、金属製の網やフレーム枠などを、炭火やガスなどの熱源の上にのせて熱し、その上に食材を直において焼く調理方法のことです。グリルでは、食材が高温度に熱した金属に直接触れるので、はっきりとした焦げ目と、スモーキーな香りをつけることが理想的とされます。

食材をグリルすると、焼いている間に煙がでるので、屋外で専用の調理道具を使って行うことが多いです。このような専用のグリル用の器材を使わないで、簡易的にグリルした料理を楽しみたいというときに使うのが、下記のようなグリルパンです。普通のフライパンのように使って、食材をコンロの上で焼きながら、グリルしたときのような焦げ目がつけられるのが特徴です。

ダイレクト(直火 direct)調理法とインダイレクト(間接 indirect)調理法

まず、アメリカの屋外で使うグリル専用の調理機材を、熱源によって大別すると、炭を使ったチャコールグリルと、プロパンガスなど、ガスを使ったガスグリルがあります。チャコールグリルは、下記のように、蓋がついた丸い形のものが一般的です。

ガスを熱源とするものは、下記のようなドーム型の蓋がついています。炭火よりも、温度を一定に保つことができるのが特徴です。

炭火で焼くにせよ、ガスで焼くにせよ、アメリカのグリルには、必ずと言ってよいほど、大きめの蓋がついており、食材をこの蓋で覆うようにして、蒸し焼き状態に出来るようになっているのが特徴です。この大きめの蓋は、アメリカのグリルという調理法には必要不可欠なものです。

次に、グリルの調理方法には、食材を熱源で直に温めるダイレクトヒート (direct-heat) とインダイレクトヒート (indirect-heat) があります。この二つの調理方法は、同じグリル機材を使って行うにも拘わらず、全く別の加熱方法なので、この違いを理解することは、アメリカの屋外調理の手法をマスターするためには、とても重要なことです。

まずダイレクトヒート (direct-heat)の場合、食材をのせる鉄製のフレームや網などを、全て熱源で温めて、比較的短時間で、食材に火を通す方法です。日本で行う、蓋無しの器材で行う一般的なバーベキューは、皆このダイレクトヒートです。短時間で火が通る、薄切りの肉や野菜、シーフードに適しています。蓋は必ずしも必要というものではありません。

一方インダイレクトヒート (direct-heat) の場合、食材を置く、中央部分には、熱源を設置しません。炭火だったら、炭を端によせたり、食材を置く部分に分厚いアルミフォイルなどで覆いをしたりします。ガスであれば、中央部の点火スイッチを消火しておきます。食材に熱源からの火力が直接あたらないように調整しつつ、蓋をしっかりと閉めて、グリルの庫内全体を温めるようにして、食材に火を通していきます。インダイレクトヒートは、グリル用に機材を使って調理するのですが、実質的にはローストと同じような効果が期待できます。オーブンでしか調理できないような食材も、インダイレクトヒートならば調理することが可能です。例えば、鶏肉やターキーを丸ごと焼いたり、調理に時間がかかる塊肉や、硬い骨付き肉なども焼けるようになります。グリルのインダイレクトヒートで丸鶏などを焼くと、余分な脂が落ちて、さっぱりとして、オーブンでローストしたのとは、少し違った食感になります。しかし、肉本来のうま味が凝縮したような仕上がりになり、香ばしさが際立って、とても美味しいです。さらに、グリル機材によっては、燻製用のチップを設置することも可能なので、よりスモーキーな風味を楽しむことができます。

このインダイレクトヒートを行うためには、蓋つきの専用グリル用機材が必要不可欠です。さらに、より適切な温度調節を行うために、アメリカではガス式の専用グリルが広く普及しています。

アメリカ式のバーベキュー

このインダイレクトヒートによる加熱技術によって、アメリカでは地域ごとに実に様々なバーベキュー文化が発達しました。とくにアメリカ南部では、地域ごとでバーベキューコンテストが行われて、タイトルをめぐって激しい戦いが繰り広げられたりします。もはや、バーベキューは単なる料理のスタイルを超えて、郷土文化の威信をかけて行う、サブカルチャーとして認識されています。

アメリカ南部はとくにバーベキューが盛んで、地域による好みの違いがはっきりしています。例えばテキサスではブリスケという牛の肩バラ肉が使われ、南カロライナでは豚肉が好んで使われます。しかし共通しているのは、複数のスパイスを使って、しっかりとシーズニングした後、インダイレクトヒートでじっくりと時間をかけて火を通し、甘辛いバーベキューソースで味付けすることです。このバーベキューソースには、トマトが多く使われたり、ビネガーやマスタードで酸味をきかせたり、モラセスや黒砂糖で甘みを強くしたりして、地域ごとの特徴が表れと言われます。

実際に、屋外でこれだけの手間と時間を技術を使って、バーベキューをすることは、アメリカ人でも限られた人にしかできません。しかし、バーベキューの文化はアメリカ南部に深く根付いており、バーべキューを売りにした専門店も多く存在します。アメリカ南部に行く機会があったら、ぜひ地域の有名なバーベキューレストランで、食事をしてみることをお勧めします。また、必ずしも屋外で時間をかけて料理をしたものだけでなく、バーベキューソースを使って味付けした料理のことをバーベキューと呼ぶこともあります。バーベキューソースは、家庭で手作りすることも出来るし、市販されているバーベキューソースも多いので、日本の焼肉のたれのような存在です。例えば、バーベキューソースで味つけしてオーブンで焼いた鶏肉を、バーベキューチキンと呼んだりします。専門的なバーベキュー料理は難しいですが、このように簡易的にバーベキューソースで味付けした料理は、日本の家庭でも手軽に楽しむことが出来ます。

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