ホシノ天然酵母の生種起こし
アメリカ南部ではグルテンの弱い小麦粉が栽培でいなかったために、イースト菌を使わないクイックブレッドがベーキングの主流でした。しかし、流通が発達した現代では、イースト菌を使った普通のパンも、もちろんよく作られているし、アメリカの他の地域同様、パンは南部の食生活に欠かせない食材です。私もたまには、普通のパンが食べたくなるので、イーストブレッドも焼いています。
イーストブレットを焼くときに、どのようなイースト菌を使うのかによって、作り方が大きく違ってきます。そのまま使えるドライイーストがもっとも簡単で、発酵も安定しているのですが、私は、ホシノの天然酵母を使っています。少し、手間はかかるのですが、やはりより自然の形態に近い酵母を使った方が、パンも美味しいような気がします。ホシノの天然酵母は、使う前に、寝ている酵母を一度目覚めさせてあげる必要があります。この作業を生種起こしと呼びますが、今回はこの生種起こしの方法について説明したいと思います。
まずホシノのホームページによると、ホシノの天然酵母には6種類あり、最初はどれを使ったらよいか戸惑うと思います。しかしこの6つの天然酵母をよくみると、下の段の真ん中にある、「ホシノ小麦粉種(赤)」だけが、小麦粉種と命名されているのに対して、他の天然酵母はパン種と名付けられているのがわかります。名前のとおり、「ホシノ小麦粉種(赤)」だけが、同じ天然酵母といえども、少し種類が違うのです。
パン種は、その名のとおり、パン生地を作るための種なのですが、小麦粉種は、パンをつくるときに入れるルヴァンをつくるための種です。パン種を使うときは、あらかじめ起こした生種を直接小麦粉と混ぜて使います。しかし、小麦粉種を使うときは、パンで使う小麦粉の一部にあらかじめ生種を混ぜておき、事前に発酵させておきます。この事前発酵させた発酵生地を、ルヴァンと呼んでいます。かなり大量のパンを日常的に作るという人でないと、ルヴァンを作るのは効率が悪いです。とりあえず天然酵母を初めて使うという人は、このパン種と名付けられている、5つの中から選ぶのが良いと思います。中でも、小さな袋で小分けされている、「ホシノ天然酵母パン種」と「ホシノ丹沢酵母パン種」が使いやすいのでおすすめです。
私は、定番の「ホシノ天然酵母パン種」をいつも使っています。50グラムごとに小さな袋に入っていますが、この50グラムでおおよそ1キロの小麦粉のパンが焼けます。1キロでは少し多いので、その半量の25グラムか、3分の一量の17グラムごとに生種を起こしています。25グラムで、約500グラム、17グラムで約300グラム程度の小麦粉で作るパンの発酵が可能です。
まず、小さなボールに、パン種を入れます。
さらに、パン種が十分にかぶる量のぬるま湯を入れます。おおよそ、パン種の3倍程度のぬるま湯を使います。ぬるま湯の温度は、夏は摂氏30度、冬は摂氏38度程度にします。ぬるま湯を入れたら、よくかき混ぜます。
ラップで軽く蓋して、さらに布巾などで覆って、直射日光があたらないようにします。そのまま、夏は24時間、冬は30時間程度、25度から35度の室内においておきます。瓶など密閉容器を使う場合は、蓋をきっちりと閉めないようにします。中の空気が膨張しているので、瓶が割れることがあります。
表面に細かい気泡ができて、香りが変わってくれば、生種起こしは完了です。そのまま冷蔵後で保存します。生種は起こした直後に使うよりも、24時間程度おいてから使った方が、安定します。起こした生種は、分離してくることがありますが、品質には問題ありません。そのまま冷蔵庫の中に放置して、使う直前に良くかき混ぜて使用します。一度起こした生種は、1週間以内に使いきるようにします。