アメリカのビスケットとイギリスのスコーン
スコーンと言えば、アフタヌーンティーでお馴染みのイギリスのスコーンが一般的です。このイギリスのスコーンは、アメリカで独自に発展し、ビスケット呼ばれて親しまれています。とくに、バターミルクを使った南部風のビスケットが有名です。
一方、アメリカにもスコーンはあります。スターバックスでお馴染みの三角形の形をしているものがアメリカのスコーンです。今回は、イギリスのスコーン、アメリカのビスケット、アメリカのスコーン、これらのものがどうように違うのかまとめてみたいと思います。
イギリスのスコーン
一般的にはバターを小麦粉に練りこんで、牛乳と卵を加えた生地で作られ、丸い型抜きで形成します。表面に卵をぬって艶出しすることが多いです。レーズンを入れたり、じゃがいもを加えてセイボリーな味付けにすることもたまにあります。しかしもっとも一般的な食べ方は、控えめの味付けでシンプルに焼き上げ、クロテッドクリームとジャムを添えます。
アメリカのビスケット
イギリスのスコーンと同様、丸い型抜きで形成され、見た目はイギリスのスコーンによく似ています。しかし、味付けは正反対で、シンプルな塩味のみで、セイボリーなものが一般的で、グレービーソースやシチューなど、食事に添えられることが多いです。生地は小麦粉とバターやラードなどの油脂を練りこんだものに、バターミルクを加えて作り、一般的には生地に卵を入れることは稀です。重曹を使って十分に生地を膨らませて、軽い仕上がりにします。
アメリカのスコーン
作り方は、イギリスのスコーン同様、小麦粉にバターを練りこんだ生地に、卵と牛乳を加えて作ります。シンプルに具を入れないスコーンは稀で、通常、レーズンやチョコレートチップ、あるいはチーズなどのセイボリーな具材が加えられます。さらに、表面にアイシングをしたり、ザラメ砂糖を振ったりすることも多いです。味がついているものなので、食べる時は、何も添えないで、そのまま食します。形は、円盤型に形成したものを8等分して、三角形に仕上げたものが多いです。オートミールを使ったスコーンなどでは、イギリスのロックケーキを連想させるような、ラフな円形に形成したものなどもあります。
スコーンとビスケットとの違いを、スコーンは甘いもので、ビスケットはセイボリーなものと、大雑把に説明されることがよくあります。しかし、厳密に言えは、セイボリーなスコーンも、甘いビスケットも存在します。あくまで、傾向としてみられるだけで、味付けは、スコーンとビスケットの決定的な違いとは言い難いように思います。
では、一体、スコーンとビスケットはどう違うのかというと、作り方の傾向から言えば、生地に卵が入っているかどうかだと思います。卵を入れると、たんぱく質は生地を硬くしますので、さくさくとした焼き上がりになります。一方、卵をいれない、アメリカのビスケットは、サクサク感よりも、生地をしっとりとふんわりと焼きがけることが身上です。
今はなくなってしまいましたが、Dlife というBSチャンネルが、Martha Bakes という番組を、『マーサの楽しいお菓子作り』という邦題で放映していました。日本でマーサ スチュアートの番組がみれる、非常に貴重な機会でしたので、出来るだけ見ていました。しかし、この番組、英語のみを聴いているときはよいのですが、日本語の吹き替えを聴いたとたんに、突っ込みどころ満載になる、ちょっと残念なものでした。
例えば、この番組で、マーサが南部式のビスケットを紹介したとき、英語版では、当然「 ビスケット (biscuits)]」と言われていたものが、日本語吹き替え版では、「スコーン」と一貫して訳されていました。これはどういうことかというと、日本で制作された日本の「巻き寿司」の作り化を紹介する番組に、英語版吹き替えで、「キンパ (kimbap)」と訳されるようなものです。
韓国風のキンパと日本の巻きずしとどちらが一般的かという問題ではありません。日本のことを紹介するものであれば、当然、現地でよばれている名称を尊重すべきです。同じように、アメリカ南部のビスケットを紹介しているのに、イギリスのスコーンにしか見えなかったいうのなら、これはかなり悲しいことです。
アメリカのビスケットは、KFCやスターバックスで売られています。個人的には、スターバックスのビスケットは、南部式というのには、ちょっと微妙な感じがするし、KFCもアメリカの一般家庭で作られるビスケットとは少し違うような気がします。生クリームやシロップがビスケットに添えられるのも、かなり日本仕様という感じです。しかし、日本にあうようにローカライズされているとはいえ、アメリカのビスケットはビスケットいう名称で売られているのです。決して、イギリスのスコーンとアメリカのビスケットを一緒にすべきではありません!!