82 Baking Tips

ショートニングとラード

 アメリカ南部のベーキングではいくつかの特徴があるのですが、その中の一つに油脂の使い方があります。ベーキングで最もよく使われるのがバターですが、それ以外にもいくつか選択肢があります。その中で、とくによく使われているのが、ショートニングと呼ばれる、白い固形の植物油脂です。

 もともと英語のshorteningという言葉は、バターやラードなど油脂全般を指す言葉であり、Wikiによると、20世紀の初めぐらいまで、shortening と言えば、専らラードのことでした。ショートニングが今日のような、固形状の植物油脂のことを指すようになったのは、1911年にP&G社が、クリスコ Criscoという商品名で、調理用の固形油脂を販売してからだそうです。19世紀の終わりに、植物油に水素を付加することにより、常温で液体の油脂を、固形状に変化させる技術が開発され、ドイツの科学者ノーマンが特許を取得しました。P&G社は、もともと石鹸を作る目的で、この技術に精通していたドイツの化学者と契約を結びます。ところが、出来上がったものはラードにそっくりだったため、ラードの代用品としてクリスコを販売しはじめます。ビスケットやパイ生地を作るとき、ラードは小麦粉と同様に、アメリカのベーキングでは必要不可欠な食材です。ラードより安価で、安定的な供給が可能であったクリスコは、瞬く間にアメリカのベーキングレシピの必須アイテムとなりました。

 動物性油脂を使うよりも、植物性であるショートニングは、ラードよりも健康にもよいとされていました。しかしながら、21世紀になると水素添加された植物油脂は、心臓疾患の原因となる有害なトランス酸脂肪と含んでいるとして、ヨーロッパ諸国が規制しはじめます。私が2002年にアメリカに留学していたころ、トランス酸脂肪などという言葉は、日本で全く聞いたことありませんでした。しかし、アメリカではその危険性が広く既に認知されており、2004年には、トランス酸脂肪の含有量が少ない、”Crisco Zero Grams Trans Fat Per Serving All-Vegetable Shortening” が販売されています。(Wiki)

 当時、国によって、健康に有害があるという食べ物がここまで違うのかと驚いたことを覚えています。これは、ただ単に、アメリカの方が全てにおいて、規制が厳しいということではなく、あるものはアメリカの方が厳しかったり、あるものは日本の方が厳しかったりするということです。食べ物が健康に及ぼす影響というものは、結局のところ、目にみえないものであり、はっきりと結論は出せないのです。従って、最終的には、どちらの国においても、もっとはっきりと目に見える結果、つまり経済的に損益を被る人が、どれだけいるのかということによって、決定されているということです。

 これはどういうことかというと、トランス酸脂肪に関していえば、詰まるところ、日本は乳製品が非常に高く、バターでさえ満足に供給できていないので、多少心臓病になるリスクが高くても、悲しいことに日本で生活する限り、トランス酸脂肪の含まれたマーガリンを食べ続けなければいけないということです!!実際にバターの変わりにマーガリンを摂取することによって、どれだけ健康に影響があるのかは、はっきりと言及することはかなり難しいです。人によって体質が違うので、摂取すべき栄養素、避けるべき食品はかなり違います。ある人にとっては、トランス酸脂肪よりも、動物性コレステロールを減らすことの方が重要になるでしょう。食事というのは、ある程度の期間をもってバランスをとりながら食材を選び必要があります。普段は米食中心の人がたまにお菓子を食べるのと、普段からお菓子とパンばかり食べている人では、気を付けるべきポイントは異なってきます。

 ただ一つ、ベーキングにおいてはっきりと言えることは、ラードはそもそもショートニングの代用品として販売されたので、レシピにショートニングとして書かれているものは、100%ラードで代用できます。そして、私の経験から言える限り、ラードで作ったものは、ショートニングで作ったものよりはるかに出来上がりがいいです。やはり、代用品は代用品なのだと実感します。ラードはもともと甘みがある油脂ですので、小麦粉と相性がよいです。そして、常温でも柔らかくなりやすいので、小麦粉と混ざりやすく、扱いやすいです。ただし、この柔らかさはメリットと同時にデメリットにもなります。とくに、パイ生地でラードを使う場合、注意が必要です。パイ生地に含まれている油脂が溶けだしてしまうと、生地がだれやすく形成しづらくなります。パイ生地は、出来るだけ材料を冷やした状態で形成すべきものなので、とくに室温が高くなる夏場は注意してください。ベーキングに必要な分量だけ計量したラードを、使用する前に冷蔵後に入れて冷やしておくと失敗を防げます。

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